

空にはヒバリがチュン、チュンさえずり、下はレンゲ、タンポポの花盛り。麦が青々と伸びて、ナタネの花が彩って…。14日に死去した俳優の渡瀬恒彦さんが9年前、上方落語の師匠役を好演したNHK連続テレビ小説「ちりとてちん」。その師匠の十八番として、ドラマでも何度も登場した「愛宕山」の一節だ。
京都の郊外で春の山歩きを楽しむ旦那と、取り巻きの太鼓持ちが繰り広げる“陽気な道中”を描いた一席。
同名の山は全国各地にある。甲府市の愛宕山は、市街地に面した標高427メートルの低山だ。レンゲ、タンポポにはちょっと早いが、散歩がてら登ってみた。
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JR甲府駅北口から山梨英和中学校・高校へ。学校の脇から登山道に向かう。駅と頂上との高低差は150メートルくらいだろうか。県庁所在地の玄関駅から、こんな近くにハイキングのできる山があるまちは、他になかなかないと思う。コンパクトな県都、甲府の良さだろう。
いきなり、かなりの急勾配が続く。市水道局の配水場を横目に登っていく。道が細くなり、左右を木々に覆われると中腹だ。一気に上り詰めれば、県科学館の建つ頂上に到達する。所要30分ほど。地図を見ると、駅から直線距離で1キロに満たない位置だ。それでも結構息が荒くなっている。
登山のごほうびは何といっても、科学館の展望台から見る甲府盆地の眺望だ。「東京スカイツリー」(高さ634メートル)よりはるかに低いが、甲府には高層ビルがほとんどないから、かなり高所に上がった感覚が味わえる。
南側には御坂山地から真っ白な“頭”を出した富士山。西側は南アルプス連峰の根雪が陽に映える。真下の傾斜地にはブドウ棚が広がる。
ところで、辞書で「愛宕」の由来を調べると、防火の意味があるようだ。市によると、麓の愛宕神社には、武田家の時代から、鬼門よけの守護神が祭られてきた。愛宕山は京都も甲府も、まちの安全を見守ってきたありがたい山だ。
帰路は北側の武田神社方面へ。「愛宕山スカイライン」を歩く。歩道も整備されている。市街地を見下ろしながら、新緑や紅葉を満喫できる。もちろん、ドライブにもお勧めだ。(中川真)
写真は英和高校、後ろが愛宕山。昔は英和の学生さんと、ちょっと話しただけでワクワクし無垢でした。(笑)

