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甲州人国記(27)

甲州人国記  “映画に燃やす情熱” ⑫-2   昭和58年                               

おとぎの国の館めいた東京・品川の本社で辻信太郎は、六千種類という商品の地域別、時間別売上高を見分けたりするコンピューター工房の「王様」めいていた。「心の商品化」をうたって、小猫(ハローキティ)や小犬のデザインをあしらった製品は、お祝いカード、文房具からカメラ、時計、電卓に及ぶ。小猫のヘヤードライヤーや、ペンギン形の電気冷蔵庫も。国内外で年商五百六十億円、千百人が働く。
「あなたは、金の日はロマンチスト、銀の日はレアリストいわれましたよ」。自分でアニメ映画の原作も書き、アカデミー賞の記録映画『愛のファミリー』や『キタキツネ物語』を作る。ソロバンは合っていない映画作りだが、菊島と組んだ『父と子』にも営利主義への妥協はない。
黒澤明の『七人の侍』で若い農民・利吉を演じた土屋嘉男(55)は、「同郷の菊島さんと一緒の仕事がやりたいですね」。塩山市上於曽の旧家に育ち、「父は私が医者をやっていると思っていますよ」。父の節堂は、甲斐郷土史の草分け。著作『甲斐史』と選集六巻が近年復刻された。「これからほんとの仕事だ」といっていた敗戦後、急逝。山梨医專へ通っていた土屋は、「やりたいことをやってやれ」と俳優座へ入る。甲府爆撃で死んだ焼死体の解剖が、いやでたまらなかった。
黒澤明に愛され家族並み待遇。映画バカ一代の自分に、武田の武将だった祖先のノーテンキ(ケタ外れ)の血を感ずるという。竹ヤブがそよいでいた大菩薩のふもとの家屋敷は人手に渡り、いまスーパーマーケット。土屋は綿菓子機械を買って庭で回し、故郷の空の雲のような郷愁の綿菓子を食べる。「バカジャンネと姉たちにいわれますよ。甲州方言にひかれるなあ」
映画といえば、鬼才といわれる監督村保造(58)は甲府の商家育ち。作家三島由紀夫と東大法学部の同級生で、三島主演の映画も撮った。冴(さ)えた目で、人間世界の深淵(しんえん)をのぞく。
(敬称略)資料;朝日新聞 

辻   土屋               
 

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